美容スペシャリストな自分になるために

更新:2019.01.10

作成:2019.01.08

インタビュー

【Fromhand 青山ビューティ学院高等部】学長 関野里美氏


 

職場でいつも輝いている人がいる。強い信念を持ち、常にブレず、全力で仕事と向き合っている。そこにいるだけで周囲に好影響を与える。プロフェッショナルと言い換えることができるかもしれない。

職業人として、どうすればその域に到達できるのか。フロムハンドと青山ビューティ学院高等部の学長を務める関野の解答はこうだ。

 

「夢や目標への意識を強く持ち続ける」――。

居場所の見出だせない学生時代。学校への強い反発心

いまや2つの美容スクールの学長を務める関野。早くから頭角を表し、天才肌にみえるが、その学生時代は決していい思い出はないという。幼少期に大けがで体にコンプレックスを抱え、それが原因でいじめにもあった。

そんな中、中一でつけまつげをして、わずか1ミリの変化がもたらす外見の変化に感動。美容に興味を持ったはいいが、高校時代は山姥メイクにまでいき着き、学校では規格外の扱いを受け、白眼視される…。

 

居場所を見出そうにもしっくりくる場所がない。それが当時、関野が教育現場に感じた印象だ。「なぜ外見の変化に興味を持ち、メイクや美容に親しみ、ファッションを楽しむことが制約されるのか…」。

やりたいことを制約される窮屈さに身動きのとりづらさを感じながら10代半ばの関野は、学校の姿勢に強い疑念を抱く。そして、「いつか感性のままにいられる学校をつくりたい」と思うようになる。

 

理想の教育の追求へ。ぶれることなく進み続ける

コンプレックスと体制への反発をエネルギーに転換した関野は、高校を卒業すると秘めた思いを胸に長野から上京。美容を極めるべくFromhandへ入学する。

すぐに美の追求にのめり込んだ関野は、バイト時間もメイクアップスキルを磨きたい。そう考え、洒落た格好でメイクボックス片手に学校周辺の原宿を周遊した。目的は、メイクアップの仕事にありつくためだ。

 

もっとも、モデルのスカウトならまだしも、この方法でメイクの仕事にありつくには少々無理がある。

「やっぱり無理か…」。実行から1週間近くが経過し、あきらめかけたその時、あるスタジオオーナーに声を掛けられ、幸運にもメイクの仕事をもらうことに成功する。この経験から関野は、やりたいことを実現するためには「言語化」「チャレンジ」が大切であることを痛感する。

 

決してコミュニケーション上手ではないというが、体験からその重要性を学んだ関野はその後、有言実行でみるみる腕を上げ、卒業後はアシスタントとして様々な現場を経験。教育部門のサポートも行いながら、学生時代に抱いた思いの具現化へ着実に近づいていく。

2014年には両校の副学長、そして2018年、30代前半で両校の学長に就任する。現役のヘアメイクアップアーティストとしての活動も並行し、スケジュールは常に埋まっている多忙な日々だ。だが、理想の教育の追求という大きなゴールへ向かい、微塵のぶれもない。

 

さりげなく背中を押し、生徒たちの本当の意思を引き出す

両校に共通していることだが、その教育方針は特に高等部では人間形成を重要視している。「この仕事は人が相手。人間としてちゃんとしていなければ、どんなにスキルを磨いてもいい仕事はできない」。

だから、学生として勉学はもちろん、あいさつや整理整頓など、社会に生きる人間として当たり前のことを徹底して身につけさせる。同時に受け身の姿勢も排除し、常に自分で考え、判断するようさりげなく背中を押している。

 

「ときどき親御さんが美容の仕事に就かせたいとお子さんを連れてくることがありますが、そういう場合、お断りするようにしています。自分の意志でやりたいと思わなければ続かないし、責任は持てないですから」と関野はキッパリ。

高校生の段階で自立心を持つ人間は少ないが、同校では質問攻めで心の中を掘り起こし、最後は本人の意思を引き出すことで、自立心を植えつけていく。

 

ゆとり世代の若者には厳しい印象もある。だが、「入学前に厳しいことは通達済みですし、いままでに辞めた人はいないです」と関野はサラリと言う。それもそのハズで、同校には美容を志す者にとって必要なものがほとんどすべて備わっているからだ。

そこには関野が学生時代に抱いた窮屈さはみじんもなく、個性やヤル気が全面的に許容される風土がある。

 

同時に美のスキルを磨く上で、ライバルが常に周囲にいる。講師には現役としても活躍するOBやOGも多い。美を追求するにはこれ以上ない環境が整っている。

就職支援でもいわゆる専門学校とは一線を画す。舞台や映画、テレビ、メーカーなど多様なネットワークを誇る同校では、本人の意思に応じ、可能な限り就職希望の現場を体験させる。そこが本当にフィットするかを見極めるためだ。

 

独自路線で突き進み、未来への投資を行っていく

自分の意志で自分の“行き先”を決める。あらゆる場面でそんな瞬間があることで、生徒は卒業するころには自ずとプロ意識が身についている。

あえて学校法人とせず、独自路線で教育を行う同校は、関野学長が学生時代に感じた負の部分を一掃することで、見事なまでに自立型の人間形成を実現している。そうした独特の校風を聞きつけた若者が、地方から高校を辞めて駆け込んでくることもあるというほどだ。

 

「本校はアート&ビジネスを掲げ、あくまでも未来への投資のスタンスで人材育成しています。卒業生は両校合わせ、3000人近くになりますが、そのネットワークを絶やさず、良質な美容人材を業界に輩出し続ける。運営にあたってはそうした強い使命感を持っています」と関野。

 

教育が健全な人格形成をサポートし、学生を適職へ導く――。

多感な若者の個性を最大限に伸ばす同校の教育スタイルが、型にはまった教育への反発心から生まれたのは皮肉という他ないが、もしも美容に対する強い思いや現状への不満が募っているなら、その名を頭の片隅にでも刻んでおいて損はないかもしれない。

 

【学校概要】

  • 名称:
  • Fromhand MakeUp Academy
  • 所在地:
  • 東京都渋谷区神宮前1-11-11グリーンファンタジアビル5F
  • 創設:
  • 1994年
  • 理事長:
  • 小林照子
  • 校長:
  • 市川雅之
  • カリキュラム:
  • メイクアップ、皮膚理論、ファッショントレンド、色彩基礎、ビューティクリエーション他
  • HP:
  • http://fromhand.co.jp/

Author:美プロ編集部

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