美容スペシャリストな自分になるために

更新:2019.07.08

作成:2016.05.18

美容師

就職する前にはしっかり確認! 美容師の社会保険事情… 美容師専門の社会保険も?


 

美容師を目指して現在一生懸命勉強している皆さんは、将来はどんなサロンに就職したいと考えていますか?

若い子に人気がある都会の最先端サロンや、地元の小規模だけど落ち着きのあるサロン、全国展開する大型チェーンのサロンなど、選択肢はたくさんあります。

 

サロンを選ぶ基準は人それぞれですが、ひとつ忘れてはならないのが“社会保険”加入の問題です。

実は、美容師業界の社会保険加入状況はあまり良くないというのが現状…。

難しい仕組みがよくわからずに、就職してから保険に入れないことに気づいたり、社会保険完備と言われていたのに、実際は違ったり…といった問題もあるようです。

就職する前に、一度しっかり勉強しておきましょう!

そもそも社会保険って何なの?

就職する際に、親から保険のことはしっかり確認しておくように言われる方も多いと思いますが、実際、何を確認しておいたらいいのでしょうか?

まず、会社で加入する主な社会保険は「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」「介護保険」の5つです。

 

健康保険

医療給付や手当金を支給して、人々の生活を安定させることを目的とした保険であり、日本では全員が加入している保険。加入すると保険証が発行されるます。一般的に、法人の企業に所属して働いている会社員の場合は社会保険に加入しています。
毎月保険料が必要になりますが、医療施設で受ける多くの治療を本来かかる費用の3割負担で受けることができます。

厚生年金保険

70歳未満の、企業で働く人が加入する公的年金制度。また、従業員が常時5人以上所属している場合には個人事業主でも加入が求められます。給与を元に算出された金額の半分を雇用主が負担して、残りの半分を従業員本人が負担します。
年をとって働けなくなったり、病気や怪我の際に一時的に働けなくなったり、年を重ねるごとに収入が減っていくリスクに備えることを目的とており、基礎年金である国民年金に上乗せして支給される年金です。

雇用保険

労働者が失業してしまったときに、再就職までの間給付金を受け取ることができる制度です。また、前身である失業保険と異なり、失業の予防や雇用構造変動にも対応ができるように考えられています。

育児や介護などの理由で休業しなくてはならない場合でも一定の要件のもと給付を受けることができます。保険料に関しては失業保険の受給者数や積立金の残高に応じて毎年見直しが行われており、4月に改定がなされます。

労災保険

仕事中や通勤中に事故・災害にあってけがをしたり病気になったり、亡くなったりしたときに保証を行い、被災した労働者やその家族を保護するために手当が給付される制度。正社員やアルバイトなど、雇用形態に関わらず適用されます。仕事に関係ない病気や仕事以外の時の怪我・出産の際には健康保険の範囲、仕事に関係することなら労災保険の範囲になります。

費用の負担は全額事業主が請け負っており、年度ごとに算出して労働基準監督署に納付を行う仕組みです。

介護保険

何かの事情で介護が必要になった際に、介護サービスが受けられる制度です。元々は家族内で行っていた介護ですが、少子高齢化が進行したために2000年より開始されました。運動能力や認知能力の状態を考慮していくつかの段階に分け、該当する段階に見合った介護を受けることができます。

市区町村が3年ごとに制定する介護保険事業計画の予算の20%ほどを、被保険者全員が負担していますが、この保険料は40代から亡くなるまで徴収されるもののため、40代までは給与明細に記載されることはありません。

 
 

もしも、あなたに万が一のことが起きてしまったときに、生活を保障してくれるのが社会保険。個人で加入する「国民健康保険」と「国民年金保険」もありますが、社会保険の方が、保障が手厚くなっています。

この5つの保険の中でも、特に非加入率が高く、確認しておきたいのが「健康保険」「厚生年金保険」の2つ。一般的には、社会保険というとこの2つの保険を指して使われます。

サロンの社会保険加入状況

5つの主な保険を確認しましたが、美容業界では、社会保険完備のサロンが非常に少ないというのが現状です。

その理由として、サロン同士での競争が激しく、従業員の保険料を払える余裕がないサロンが多いこと、従業員の離職率が高く、保険には加入させたくないと考えるオーナーが多いことなどが考えられます。

 

また、法人化されていない個人サロンも多く存在しており、社会保険への加入が義務化されていないことから加入していないというサロンも多いのです。

ただ、最近では美容師たちに安心して長く働いて欲しいという考えから美容業界でも社会保険完備のサロンが多く、他の一般企業と変わらない待遇を受けられることも非常に多くあげられます。

個人経営サロンと法人サロン

では、社会保険加入は会社の義務ではないのでしょうか?

社会保険の中で「雇用保険」と「労災保険」は加入が義務付けられているのですが、加入できないことが多いのは「健康保険」と「厚生年金保険」です。

実はこの2つの保険は、個人経営のサロンでは加入が義務ではないんです。

社会保障への加入義務は業種によって分けられおり、加入義務があるのが「適用事業所」、義務がないのが「任意適用事業所」となります。理美容業は飲食業や旅館業など一緒に、「接客娯楽業」として任意適用事業所に含まれているのです。

 

全国にたくさんあるサロンですが、個人経営の店はとても多いですよね。

社会保障を重視するのであれば、株式会社や有限会社として法人化し、大規模にチェーン展開しているサロンの方が良いかもしれません。

もっとも、法人化しているサロンでも社会保険非加入率は高いようです。昔から業界全体として、あまり社会保険に加入しない風習が未だに残っていることも。

美容師の健康保険

社会保険が完備されている会社でも、健康保険に関してはいくつかの種類があり、会社によって導入している保険が違います。

中小企業の会社員が加入していることの多い「協会けんぽ」という社会保険に加入しているサロンも多いのですが、美容業界では、美容師専門の健康保険があります。「全日本理美容健康保険組合」「東京美容国民健康保険組合」「大阪府整容国民健康保険組合」という3つの健康組合があり、それぞれ保険料や加入条件も異なるので確認しておきましょう。

全日本理美容健康保険組合(理美けんぽ)

一般的な健康保険と同じく、個人が負担する保険料は給料から天引きされて、会社が保険料の半分を負担してくれます。保険料は前年の収入によって変わるという点も同じです。会社が理美けんぽ組合に属していることが加入する条件です。

 

東京美容国民健康保険組合(美容国保)

美容国保は、給料によって保険料が変わるということがなく、一律の保険料金となります。加入の条件も、サロンが東京都内にあり、従業員は神奈川・千葉・埼玉・茨城・山梨の決められた区域に居住している人が対象と、関東圏の美容師に限られているのが理美けんぽとの違いです。

 

大阪府整容国民健康保険組合

大阪府下のサロンが対象ですが、兵庫・奈良・京都・和歌山・滋賀・三重のなかで、指定された地域に居住する人が加入することができます。この組合は、サロンが組合に加入しなくても個人で健康保険に加入することができるという特徴があります。
 

パート・アルバイトで働く美容師の社会保険

「社会保険は正社員しか加入できない」と考えている人も多いのですが、それは誤解です。

サロンが法人経営であった場合、正社員やパート、アルバイトなどの待遇を問わず従業員は原則的には社会保険に加入する義務があるんですよ。ただし、一週間の労働時間および一カ月の労働日数が正社員の4分の3以下であれば加入の義務は無くなります。

正社員が週に40時間労働している場合、パートやアルバイトで30時間以上働いている人が対象となるんですね。

 

また個人経営の美容室でも、社会保険の加入義務はありません。これは理容業、美容業が社会保険の非適用業種となっているからです。

一般企業の場合は従業員が5人以上働いている場合に加入の義務が生じますが、美容室では何人働いていても適用事業所にはなりません。とはいえ、義務ではないものの加入出来ないという訳ではなく、オーナーが任意で加入することもできるんですよ。

 

ただし美容室が社会保険を完備するためには、会社の負担分を支払うためにもそれ相応の売上が必要になります。

従業員1人当たり、70万円近い売上が必要とも言われていて、十分な売上がなければ従業員の負担分と会社の負担分を支払うのが難しくなってしまうんですね。

ほとんどのサロンではそうした売上に到達できていないため、社会保険に加入していないところも多いというのが実情なんです。さらに美容師は離職率も高く、数年で辞めてしまう人が多いため、オーナーとしても加入を躊躇ってしまうとのこと。逆にいえば社会保険が完備されているサロンは、それだけ売り上げや経営が安定しているということかもしれません。

フリーランスとして働く美容師の社会保険

サロン・企業に直接雇用されているパートやアルバイトの美容師が社会保険に加入できることは分かりましたが、それではフリーランスとして活動している美容師の場合はどうなのでしょうか。

 

結論から言うと、フリーランスとして活動する美容師も保険に加入することができます。まずは自分で国民健康保険に加入手続きを行い、年金に関しては国民年金に加入をします。日本に住んで働いている20~60歳の人には、必ず年金を支払わなければいけないという義務があるので、忘れずに加入をするようにしてください。

 

ただ、雇用保険(失業保険)や労災保険、厚生年金保険には加入することができないので、怪我や病気に備えるためにはフリーランス専用の「フリーランス協会保険」というものに自分で加入をすることが必要。所得を元に保険料を支払ってもらうことができるので、急な怪我で病院にかかった際にもある程度の補償をしてもらうことができます。

 

何にせよ、雇われているのではなく自分1人で働いている以上、保険や年金の手続きから年末の確定申告まで、全て自分自身で行う必要があります。せっかく独立をしようとしても、初めてだと申請の仕方が分からずに挫折をしてしまうということも・・・。
手続きで手間取って独立が遠のいてしまった!なんてことにならないよう、既にフリーランスとして働く先輩スタッフに話を聞いてみるのが良いかもしれません。

 

サロンの経営者側から見た美容師の社会保険

個人経営のサロンでは加入が任意となる社会保険ですが、サロンを経営する際に社会保険に加入するメリットはどのくらいあるのでしょうか。まず第一に、美容師に限らず、就職先を探す際には社会保険についてチェックする人がほとんどです。

上でも書いた通り社会保険に加入するためには経営者にもそれなりのコストがかかりますから、保険の有無は信用できる企業かどうかの目安になっているんですね。

 

美容専門学校の中には、社会保険に加入していないサロンの求人を受理してくれないところもあるんですよ。エステサロンやネイルサロンは社会保険や有休など福利厚生が充実しているところが多いため、美容室ではなく他の美容業界に流れてしまう傾向もあるそうです。そんな中、労働時間などがハードになりがちな美容室で、社会保険が完備されているというのは求職者にとってもかなり魅力的。社会保険は従業員のための保険ですが、加入すれば従業員から信頼を得られるため経営者にとってのメリットも大きいと言えます。

 

法人経営のサロンの場合、社会保険に未加入であることはかなりのリスクを伴います。全員加入させるのは厳しいからと役員やスタイリストなど一部の従業者だけ加入させ、行政から指導を受けた後も加入を拒否し続けたりすると、そのサロンは悪質とみなされ、全従業員の保険料を過去2年間遡って徴収されてしまうこともありえます。

これはかなり経営を圧迫することになってしまいますね。

 

とはいえサロンの多くは個人経営のため、そういった心配は必要ないでしょう。そのため、まずは加入しないで様子をみて、売上が伸びてきた頃に加入する、というような方法で少しずつ環境を整えていくことも出来ます。経営で無理をして傾いてしまうより、少しずつお客様からも従業員からも信頼されるサロンへと成長させていくのが理想的だと言えるでしょう。

 

ちなみに、社会保険の中には「雇用保険」や「労災保険」といったものも含まれます。

美容師は刃物を扱う職業なので、業務上の怪我や事故に対する保険である「労災保険」は特に重要。「労災保険」に加入していない場合は万が一の時、従業員の代わりに事業主が治療費を支払うことになってしまいますが、加入していると補償が下りるので事業主が負担せずに済みます。この二つに関しては個人経営のサロンでも加入義務があるので、安心して働けるというわけなんですね。

 

保険料は収入や居住地によって変わってきますが、美容業界専門の健康保険は3つとも、一般的な健康保険よりも安くなることが多いようです。まず、社会保険があるかどうかということの確認はもちろんですが、健康保険はどこの組合に加入しているかというところまで、しっかりと確認しておくといいかもしれません。

美容師の「年金」事情

社会保険のなかでも気になるのが「年金」制度。以下では美容師が受け取る「厚生年金」と「国民年金」について、どんな仕組みになっているのか詳しく見ていきましょう。

 

そもそも「国民年金」とは、老後や障害者になった場合に国から年金を受給できる保険制度のこと。20歳~60歳未満の全国民が加入する“最低限”の保険制度で、働いているかどうかに関わらず保険料を必ず国に支払わなければなりません。

それに対して「厚生年金」は会社や組織で加入する年金制度。自身が務めている美容室が加入している場合は、将来年金を受給される年齢になったときに「国民年金」に上乗せする形で「厚生年金」も受け取ることができます。

 

美容師が「厚生年金」と「国民年金」のどちらに加入するかは、会社の規模によって異なってくる様子。勤めている美容室が株式会社などの「法人」だった場合には、大きな会社ではなくとも「厚生年金」への加入が義務づけられています。

ただしオーナーが「個人事業主」で従業員が4人以下だった場合、加入は義務ではなく「任意」となる仕組み。そのため「厚生年金」制度に加入していない美容室も、必ずしも違法というわけではないんですね。

 

また加入が「任意」の美容室でも、事業主が申請すれば「厚生年金」制度に加入することができます。ただしその場合には、従業員の半数以上が同意していることが条件となるので、事業主の人は注意しましょう。

 

「厚生年金」に加入している美容室で働くと、もらえる年金の額が増えるのが嬉しいところ。また自分で「国民年金」を支払い続ける手間を考慮すると、未納の心配がなくなるのは大きなメリットと言えるでしょう。自分や家族の将来のこともよく考えて、職場探しの参考にしてみてくださいね。

 

美容師の老後にも関わる「年金受給資格」

美容師も加入する「国民年金」制度ですが、2017年以前までは25年のあいだ国民年金保険料を支払い続ける必要がありました。

もちろん保険料をきちんと支払わないと、年金を貰う権利を失ってしまうことに。勤め先で社会保険に加入しないこともある美容師にとって、保険料を長期間にわたって支払い続けることは大変だという風潮もあったようですね。

ですが2017年8月1日から制度が変更することに決定。「10年」の支払い期間でも年金受給資格が発生することになり、美容師には嬉しいニュースとなりました。10年で年金を受け取る為の条件等も特になく、年金受給をされる年齢になった時点で10年以上保険料の支払いがされていれば誰でも受け取ることができるものです。ただし、25年が10年になったことによって受給できる金額が減少することも事実。25年払っていた場合と同じ金額がもらえるわけではない、ということもしっかり理解しておきましょう。

 

制度変更は該当する職種の人に手紙で通知されていますが、住所変更などによって該当者全員に情報が行き渡るか懸念されているよう。該当する人はしっかり情報を仕入れて、年金を貰えるようにしておきたいところですね。

まとめ

仕事を続けていく上で、どんなケガや病気にかかるのかを予想することはできません。特に美容師として働いていく上では、ハサミでケガをしたり腰を痛めたりといったリスクは大いに考えられます。そのリスクを考えて、保険の知識を持っておくことは必要不可欠。

 

もちろん美容師以外の仕事でも、保険に関する知識は同じように必要になります。いざというときに自分の身を自分で守れるように、保険に関する基礎知識はしっかり身に付けておきましょう。

また、将来長く働くときのことを考えた上で、なるべく保険が完備されているサロン選びをすることも大切ですね。

Author:美プロ編集部

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